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AIに描けない、栃木の「行間」の話 — デジタル制作の8割はアナログな対話から生まれる

2026.03.09

 

AIに描けない、栃木の「行間」の話 — デジタル制作の8割はアナログな対話から生まれる

前回の記事では、画像生成AIを使って「未来の栃木」を描いてみました。空中を走るLRTや、緑と調和したスマートシティ。その美しく、どこか無機質なほど完璧な風景を眺めながら、私は制作者として一つの「違和感」を抱いていました。

それは、「ここには、私たちが知っている『栃木の体温』が描かれていない」ということです。

AIが描く「正解」と、現場にある「ノイズ」

AIは、膨大なデータから「もっともらしい美しさ」を抽出します。しかし、AIがどれだけ高精細な画像を生成しても、その街角で交わされる挨拶や、地元企業同士が長年積み重ねてきた「あうんの呼吸」までは描けません。

デジタルの世界では、こうした目に見えない関係性や泥臭いプロセスは、往々にして「ノイズ(不要なもの)」として処理されてしまいます。

しかし、20年以上この地で制作の仕事をしてきて思うのは、栃木の仕事の本質は、その「ノイズ」の中にこそあるということです。

デジタル制作の主役は、PCの前にはいない

「デジタルコンテンツ制作」というと、涼しい顔でパソコンに向かい、最新のソフトを操る姿を想像されるかもしれません。しかし、私の実感は少し違います。

良いもの、本当に地域に響くものを作ろうと思えば思うほど、PCに向かっている時間よりも、お客様の話を聞いている時間の方が、圧倒的に重要であり、かつ長くなります。

  • 大企業の管理職の方々の悩みの多くはアナログ由来。

こうした「言葉にならない想い」をどれだけ自分の中にストックできるか。 デジタルのスキルは、その想いを世の中に「翻訳」するための道具に過ぎません。道具がどれだけ進化しても、翻訳すべき「原稿(人の想い)」がなければ、中身のない空っぽな表現になってしまいます。

「何を作るか」を決めるのは、いつだって画面の外にある、アナログな対話なのです。

栃木のインフラは「信頼関係」という目に見えない糸

栃木で仕事をしていると、企業同士のつながりの強さに驚かされることがあります。 「〇〇さんの紹介なら間違いないね」 「あそこの会社が困っているなら、うちが少し手伝おう」

こうした地元の企業同士の信頼関係は、一朝一夕には築けません。そして、この「目に見えないインフラ」こそが、どんな最新技術よりも強力に栃木の経済を支えています。

デジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)と叫ばれる昨今ですが、私は「信頼関係というアナログな土台の上に、デジタルという便利な橋を架ける」ことが、栃木らしい正しい進化の形だと信じています。

まとめ:理想の未来を「誰と」作るか

AIが描いた未来図は、あくまで一つの「可能性」です。 その美しい街並みの中で、誰が笑い、誰が誰を助け、どんな想いで商売をしているのか。

その「行間」を埋めていくのは、AIではなく、今ここで汗をかいている私たち人間です。

20年という月日は、私に多くの技術を教えてくれましたが、それ以上に「人の話を聞くことの尊さ」を教えてくれました。これからも、最新の技術を追いかけつつ、それ以上に地元の皆さんの声に耳を傾ける「聞き上手なデジタル屋」でありたいと思っています。

栃木県で20年以上、デジタル制作の現場に携わってきました。 栃木県内で事業を進める皆さまの取り組みが、少しでも前に進むきっかけになればうれしいです。

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