【第2回】BOMには種類がある?設計・製造・購買で「見たい情報」が違う理由
前回は、BOM(部品表)が不備だと現場でどのような「悲劇」が起きるかをお話ししました。 記事を読んだ方から「うちは設計図があるから大丈夫だと思っていたけれど、実はBOMがバラバラだった」という声をいただきました。
なぜ、一つの製品を作るのに、複数のBOMが必要なのでしょうか? それは、「立場が変われば、見たい情報が全く違うから」です。今回は、現場でも欠かせない、主要なBOMの種類とその目的を整理します。
1. E-BOM(設計部品表):製品の「DNA」を定義する
製品が設計される段階で、エンジニアが作成するのがE-BOM(Engineering BOM)です。
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目的: 製品の機能や仕様を定義すること。
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特徴: 「何でできているか」を基準に、モジュールやユニット単位のツリー構造になります。
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現場の視点: 家電なら「制御基板ユニット」「液晶パネル」といった機能の塊で管理します。設計変更の履歴を追いかけ、最新の仕様を担保するのが役割です。
2. M-BOM(製造部品表):工場の「手順」を定義する
E-BOMをベースに、工場の組み立てラインに合わせて組み替えたのがM-BOM(Manufacturing BOM)です。
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目的: 効率的な組み立てと現場への指示。
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特徴: 「どう作るか」という工程の順番に並んでいます。
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現場の視点: 農機具なら、大きなフレームにまずどのネジを打ち、どのタイミングでエンジンを載せるか。図面には描かれない「グリス」や「接着剤」「梱包材」も、ここでは立派な「部品」として登録されます。
3. P-BOM(購買部品表):お金と納期を管理する
今、最も注目されているのが、調達・購買部門が活用するP-BOM(Purchasing BOM)です。
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目的: 最適な調達、原価管理、リスク回避。
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特徴: 部品単価、リードタイム、発注ロット、サプライヤー情報が紐付いています。
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現場の視点: 「この半導体は納期に半年かかる」「このボルトはA社よりB社が安い」といった情報です。昨今の部材高騰や供給不安定な状況下では、このP-BOMの精度が企業の利益を左右します。
4. S-BOM(サービス部品表):長年の愛用を支える
製品が出荷された後、何年も使い続けるユーザーを支えるのがS-BOM(Service BOM)です。
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目的: メンテナンス、修理パーツの特定。
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特徴: 摩耗部品や、現場で交換可能な「補修用アッセンブリ」単位で構成されます。
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現場の視点: 10年前に販売した農機具の「あのフィルター」を即座に特定し、代替品を提案できるのは、このS-BOMが整備されているからです。
結論:バラバラではなく「一気通貫」が理想
これら4つのBOMを、それぞれの部署がExcelでバラバラに管理しているとどうなるでしょうか? 「設計変更したのに、古い部品を買い続けてしまった(P-BOMとのズレ)」「工程が変わったのに、古い手順のままだった(M-BOMとのズレ)」といったミスが必ず起きます。
大切なのは、「一つの正しいマスタデータ(SSOT:Single Source of Truth)」を、各部署がそれぞれの用途(View)で見ているという状態を作ること。これが製造業DXの第一歩です。